43『白き鳥の名を呼ぶ時』



 私の前には壁がある。
 高い高い壁がある。

 よじ登ろうにも手掛かりがない。
 迂回しようにも右を見ても左を見ても端が見えない。
 砕き抜こうにも道具がない。

 しかし悲観はするまい。
 やっとこの見えない壁の存在を認め、越えることに挑めるのだから。



 こちらはファトルエル北の郊外。ファルガール達三人と今回の大災厄の中核を成すグランクリーチャー《グインニール》が闘っている場所だ。
 あれから情勢は変わっていない。
 ファルガールとマーシアが攻撃し、カルクが防御をする。
 三人はぴったりと息が合い、さしもの《グインニール》もなかなか足を進めさせてもらえない。
 しかし、一見カルクによって簡単に防がれているかのように見える《グインニール》の攻撃の威力は半端ではない。
 外れた攻撃が抉った地面がその威力を物語っていた。水弾の跡などは小さなクレーターになってしまっている。
 一発でも当たれば確実に状況がひっくり返る。

「ここに敷かれしは《炎の陣》。冷気は決して入るべからず!」

 《グインニール》が吐き出した水弾に対して張られた炎の壁は水弾を一瞬で蒸発させる。
攻撃で出来たスキを狙い、ファルガールが《ヴァンジュニル》を一閃させ、生み出した雷をその化け蛇の頭にぶつける。
 更にマーシアが《紅炎》を使って畳み掛ける。
 《グインニール》は衝撃に身を背後に仰け反らせ、更に大きなスキとなったが、三人は追撃を掛けるような事はしなかった。

 三人の目的は飽く迄グランクリーチャー、即ち大災厄の足止め。
 《グインニール》が体勢を直す間は無駄な追撃をするより、少しでも手を休め、力の温存を計る方を優先したのだ。

「ハア……ハアッ……!」

 マーシアが苦しそうに肩で呼吸をする。
 彼女の方が先に闘い、しかも初めは単独で、しかも一発限りの大魔法を使ってしまっているのだ。
 むしろ今まで持っていることが驚くべきことであると言える。

「マーシア。まだ先は長い、無理するな」
「心配は有り難いけど、相手は大災厄よ……少しくらい無理をしなくちゃ……」

 声を掛けたマーシアが苦しげに笑ってみせた。
 それを見て、ファルガールも笑ってみせる。
 カルクは少しだけ口の端を持ち上げてみせた。

「俺達は今んトコ平気だけど、だんだん辛くなって来るんだろうな」
「そういえば、我々が待つ彼は果たして無事だろうか?」

 カルクの言葉に、ファルガールはファトルエルを振り返って答えた。

「ま、危うくも何とか生きてるってトコだな。あのジルヴァルトとかいうガキ、ただ者じゃねぇな。あんな奴まで参加してるとは思ってなかった」
「そんな相手にレベル4以下の魔法だけで勝てるのか?」

 不意にそう問われたファルガールは困ったように苦笑してみせた。

「バレてたか」
「あれは使えないのか? 使わないように教えているのか?」

 そのカルクの問いには一瞬だけ迷った後に答えた。

「前者だ。使えねぇ」

 その答えにカルクは何も言わなかった。予想していた答えだったからだ。
 無言のうちに更なる説明を求める。

「一応教えはした。魔力は十分あるし、魔導制御に関しちゃ俺でも適わんくらいなんだが、レベル5以上となると、あともうちょっとの所で魔力が勝手に引っ込んじまうらしい」
「……それで、あの相手に勝てるのか?」
「勝てるに決まってる」

 即答し、ファルガールはニカッと笑ってみせた。
 その笑顔は不敵で、自信に満ちたものだ。

「ちょっと考えてみろよ。アイツは誰に守られるまでもなく、一人で十年前の大災厄を生き残ってるんだぜ?」


   *****************************


 ファトルエル大決闘場では観客を湧かせる闘いが続いていた。
 《地への帰依》、《魔縛りの影》、《砂の戒め》。その三つを合わせて完全に打つ手が無くなった状態からリクが生還した時からジルヴァルトは戦法を変えていた。
 先ほどまでは後の先を取り、相手に攻撃させてからそれを防ぎつつ、そのスキをつくか、《歪みの穴》や《衝撃の伝導》を使って相手の魔法をそのまま返す闘いをしていた。
 それが今は打って変わったように自分から攻撃し続けていた。

「風よ、不可視なる刃をもって全てを切り裂く《真空波》となれ」
「……っ! 《瞬く鎧》によりて、我は一瞬、全てを拒絶する!」

 ジルヴァルトが呪文を唱えきっても一見何も起こらなかったのだが、受けるリクは血相を変えて《瞬く鎧》を唱えた。
 現れた障壁に突然何かがぶつかって分散した。

(見えない攻撃にこのタイミングの難しい魔法を使うとは……しかし、見たところあの防御魔法で防げるのはレベル5まで……それならば)

 そう考えたジルヴァルトは次の攻撃に入った。

「念込められし《殺意の魔弾》。願われるは汝の敗北。その矢じりは射手の意に導かれ、堅き岩をも打ち砕く」

 リクに向けられた彼の掌の先に黒い光の玉が形成され、放たれた。《殺意の魔弾》はうなりをあげてリクに向かって飛んでゆく。
 それをリクは《飛躍》を使って上空に逃げた。
 しかし、その後を追うように《殺意の魔弾》も上昇する。

(しまった……!)

 下方から追い掛けて来る黒い光の玉を見てリクは舌を打った。とっさの事とはいえ、空中に逃げたのは不味かった。これでは身動きがとれない。
 魔法で防ごうにも《瞬く鎧》では少々心もとない。

「我は投げん、その刃に風巻く《風の戦輪》を!」

 手に現れた風の輪を下に向かって投げ付ける。
 リクのすぐ下に迫って来た《殺意の魔弾》と《風の戦輪》がぶつかりあった。
 しかし《殺意の魔弾》のレベルは6だ。レベル4の《風の戦輪》は少しばかり威力を殺すくらいしか出来ずに四散した。
 《風の戦輪》をうち落とし、《殺意の魔弾》は更にリクに近付いた。

「《瞬く鎧》によりて、我は一瞬、全てを拒絶する!」

 間一髪、黒い光の玉が触れるか触れないかの時に《瞬く鎧》が発動し、《殺意の魔弾》は消散した。
 確かに《殺意の魔弾》はレベル6でそのままでは《瞬く鎧》では防げない。だからリクはまず《風の戦輪》で威力を殺し《殺意の魔弾》をレベル5の威力にしてから《瞬く鎧》を唱えたのだ。
 結果を見てジルヴァルトは珍しく自分を責めた。

(我ながら安直な考えだった……。一つで足らなければ二つで防げばいい。……分かっていたつもりだったが)

 さっきからどうも自分の歯車が狂っている。
 事もあろうにリクがもし防御出来なくても死なないように力をセーブするとは。

 魔力はある。また、それを十分に制御出来ている。
 魔導の技術だけはジルヴァルトをも凌ぎかねないほど高い。
 それなのにレベル4以下の魔法しか使えない。そんな中途半端な素質の人間などジルヴァルトは見たことがなかった。

 これがリクの限界の強さだとはどうしても思えない。
 彼の限界を見ないうちには殺してしまいたくない。
 全力のリク=エールと闘って打ち破りたい。
 強者との闘いを求めるジルヴァルトの気持ちが彼に手加減をさせていたのだ。

 しかし、それは甘かったことを悟った。
 死ぬほどの窮地でもないのに、実力を発揮できるものか。

(もう手加減はしない。防御が出来なければ確実に死ぬだろうが、そうなれば俺の見込み違いだったということだ。もう勿体振ることはない……!)

 ジルヴァルトは腕を天に向けて振り上げた。

「廃れさせ滅ぼす力よ、ここに!」

 空を向いた掌の上に再び黒い光が集まっていく。
 しかし、先程の《殺意の魔弾》とは全く比べ物にならない大きさだ。

「今度はなんだ……?」

 その様子に顔を強張らせているリクに向かってジルヴァルトは高らかにその名を呼んだ。

「リク=エール!」

 リクの目と自分の目が合うのを待ち、ジルヴァルトは続けた。

「これから俺が唱える魔法は小細工では止められない。詠唱中に魔導を邪魔する手もあるが、俺は意地でもこの魔法は完成させる。
 お前が生き残る方法はたった一つ、これを超える魔法をもって対抗することだ! さあ迎え撃て! お前の本気を見せてみろ!」

 そう言ってジルヴァルトは呪文の詠唱に意識を集中させてしまった。
 今、ジルヴァルトは完全に無防備だ。幾らでも攻撃は当たるだろう。だが彼はそれを承知で隙をつくこともせずに魔導に入ってしまった。
 おそらくそうなるのも覚悟の上だということだ。その上で彼は魔法を完成させると言った。と言うことは、その言葉通りになる可能性は十分に考えられる。
 だから、リクが確実に生き残る方法はただ一つ、ジルヴァルトの言った通り今彼が唱えている魔法と同等以上の魔法で迎え撃つしかない。

(俺の本気を見せてみろだと?)

 リクはこれでも本気で闘っていた。
 何度も死ぬような目にあって、これ以上無いくらいに今持っている力をフルに使ってやっと生き残っている。
 確かに強者との闘いを望むジルヴァルトにしてみれば折角の決勝戦でレベル4までしか使えない、工夫と根性のみが取り柄の弱小魔導士が相手では不満を感じるのかもしれない。

(しかし無い袖は振れない……)

 かと言ってこのままではジルヴァルトの魔法を喰らって今度こそ死んでしまう。
 今までだって何度もレベル5以上の魔法がないお陰で苦労をさせられた。せめて使えるレベル4以下の魔法の精度をあげていくうちに魔導制御力だけが高まっていった。
 リクは大きな魔法を平気で使えるジルヴァルトが羨ましかった。

「信頼を揺るがす欺瞞よ、渦巻け! 誰もが背を向ける恐怖よ、膨らめ!」

 目の前でジルヴァルトの頭上の黒い球体は大きく膨らんで行く。これが完成すると本当に逃げ道は無くなるし、小細工も通用しそうに無い。

(ここが、俺の限界か……)

 リクは思わず空を仰いだ。
 無論そこにあるのは大災厄の暗黒の空だ。
 あの時と同じ空。

(あんまり、コイツには頼りたくなかったんだけどなァ……)


   *****************************


 かつてもう自分の持つ力でどうにもならなくなったことが一度だけあった。
 言うまでもなく、十年前、リクの故郷を襲った大災厄の時である。

 あの時、クリーチャーに両親を目の前で殺され、続いて目を付けられたリクは必死に殺戮の中を逃げ惑っていた。
 真っ暗な空、激しい風雨、暗闇を赤く照らしだす炎、立ち篭める血の匂い、地面に転がっている変わり果てた知人達。
 あまりの光景に幼いリクは目を伏せて走り続けた。
 誰かを頼ろうにも、もう生きている人間など見かけなかった。

 リクはいつの間にか開けた場所に出て来ていた。
 不意に顔を上げた時、リクは圧倒された。

 それは人型のグランクリーチャーだった。
 その右手には剣を、その右手には斧を持ち、全身が鉄の甲冑に覆われ、巨大な騎士という感じを受けた。
 グランクリーチャーはその首をもたげ、幼いリクに目をつける。
 そして、おもむろに右手の斧を振り上げた。
 狙うのは勿論リクだ。

 自分に向かって振り降ろされる斧。
 しかしリクは避けることをしなかった。
 避けようとしても避けられない。
 避けられたとしても、再び逃げる気力は残っていない。

 もう逃げるだけなのはいやだ。
 力が欲しい。
 この嵐と闘えるくらいに強くなりたい。
 この嵐に勝てるくらいに強くなりたい。

 そんな気持ちを込め、上からどんどん迫ってくる斧の刃を睨み付けた。
 不思議と恐怖は感じなかった。
 妙に斧の振り降ろされるスピードが緩やかに見える。
 その斧の向こうに見える真っ暗な空。その向こうにはちゃんと星空があるのだろうか。
 そんな事を取り留めもなく考えていた。
 その時だ。
 彼がその暗黒の空にそれを見たのは。

(……白い…鳥?)

 この激しい風の中、それは悠々と飛んでいた。
 まるでからりと晴れた青空の中を進むように。
 姿を見せながら、まるで別の世界に存在しているかのように。

 ジッとそれを見ていると、その白い鳥がきらりと輝いた。
 その光は一瞬のうちに広がり、リクをも包んだ。

 次に気がつくと、彼は眩い光の中に居た。
 立っているのか、寝ているのか、浮いているのか。自分がどのような状態にあるのかわからなかった。
 だがとにかく現実離れした場所である事は分かった。
 不意にどこかから声が聞こえてきた。


 -------・・・目を覚ましたか? 少年・・・-------


 その声は聞いたことがあるような気がした。
 そして何故か誰の声なのかも分かった。

「あの白い鳥……?」


 -------・・・その通り。そしてそなたを助けたのも私だ・・・-------


「どうして僕を助けたの?」


 -------・・・あのまま死にたかったのか……?・・・-------


 白い鳥の声に聞き返され、リクはぶんぶんと首を振った。

「そうじゃない! どうして僕だけを助けたの?」


 -------・・・あの状況で助けられるのは一人だけだった・・・-------


「じゃ、どうして僕なの?」

 白い鳥の声は少し間をおいて答えた。


 -------・・・私は人の心を聞くことができる。あの惨事の中、実に多くの人間の心が聞こえた・・・-------


 不意にリクの耳に轟音が聞こえた。
 いや轟音ではない。人の声の集まりだ。
 何十、何百もの声がまとめて聞こえる。

 助けを乞う声、死にたくないと祈る声、そして己の無力に嘆く声。
 悲鳴、怒号、絶叫。
 その声の濁流は否応無しに彼の耳に流れてきた。
 声の中には彼の両親、知人の声が混じっていることにも気がついた。

 たまらず、リクは叫んだ。

「うああぁぁぁ!」


 -------・・・そなたには酷やもしれん。だが冷静に耳を傾けてくれ・・・-------


 白い鳥の声に言われ、叫びを抑えてリクは耳を傾けた。
 しかし、その真意は計りかねた。
 白い鳥は自分に一体何を聞かせたいのだろうか。

 不意に一際大きな声が聞こえた。
 その声は全く他の声とは異なるものだった。
 それは願う声だった。
 力を欲し、大災厄と闘い、それに打ち勝つことを願う声。

「僕の声だ……」


 -------・・・そうだ。あの圧倒的な声の中で、そなたの声がはっきりと大きく聞こえた。その声がする場所に行くと、かのグランクリーチャーに殺されんとしておる少年、つまりそなたがいたのだ・・・-------


「一番大きい声だから助けたの?」


 -------・・・その通りだ。今聞かせたのは実際の声ではない。あくまでも心の声だ。心の声の大きさは意思の強さの表れ……私はそなたに賭けてみたくなったのだ・・・-------


「何を……?」


 -------・・・この世から、大災厄を根絶することだ・・・-------


 あっさりと即答されたものだが、リクはその内容は果てしなく大きいことくらいは十分理解出来た。
 大災厄を根絶する。
 たった一つの大災厄にさえ歯が立たない人間にそんな事が可能なのだろうか。
 だが、大災厄がこの世界からなくなればどんなにいいだろう。
 そして、白い鳥は自分にそれをやれと言っていた。


 -------・・・そなたの欲した力を与えよう。しかしこれは素質に過ぎないので、きちんと鍛え上げなければならない。十年鍛え、その時点で己の限界を感じた時、我が名を呼ぶがよい・・・-------


   *****************************


(……あれから十年。与えられた素質じゃレベル4までしか使えなかったんだ。責任取りやがれ!)

 ぼうっと空を眺めていたリクがふとジルヴァルトに目を移す。
 その目は決して諦めた者の目ではなかった。
 突然呪文の詠唱を始めた。

「その翼は如何なる嵐にも動じない力強き翼!
 その色は何にも汚されぬ純白!
 その白銀の嘴は全ての者を貫き通す!」

 リクの詠唱と共に、足元に巨大で複雑な魔法陣が光で描かれてゆく。
 しかし同時進行で、ジルヴァルトの魔法が着々と完成しつつある。

「これに触れるものは望むがいい、自らの消滅を!」

 黒い球体が急な膨張を見せた。
 そしてこれで発動するだけの所まで完成したのだろうか、ジルヴァルトはその黒い球体を頭上から正面へと移す。

「その御姿の神々しさたるや、神獣として相応しき!」

 リクはそれを見ながらも冷静に詠唱を進め、魔法陣を完成させた。魔法陣を描く光が増して行く。
 しかしやはり唱えはじめるのが早かった分、魔法の完成も早かった。

「そして従うがいい……冥王による《荒廃への導き》に!」

 ジルヴァルトの手から黒い球体が離れる。
 黒い球体は、ゆっくりとリクに向かって進んで行く。

 そのまま彼に当たるのかと思いきや、その中間地点でその動きを止めた。そして、その球体から同じく黒い光で出来た何本もの触手のようなものが生えてくる。
 それはスルスルとリクに向かって伸びてゆき彼を包み込むように周りから囲ってゆく。
 リクは、それをも意に介さず、詠唱を続けた。

「来れ! 天翔け巡り、司る者よ! その名は……」

 リクの足元の魔法陣が、輝き始めた。
 しかしその次の瞬間、リクを覆った触手を伝うように、黒い球体が移動し、リクのいた場所を飲み込んだ。

 ああっ……と観客から声がもれる。
 見るもの全てがこの勝負は決したと思った。
 ジルヴァルト自身も、リクが黒い球体に取り込まれたのを見て、ため息とも取れる息をつく。

 しかし、勝負はまだ終わっていなかった。

 真っ先にそれに気付いたのは無論術者本人であるジルヴァルトだ。
 普通ならこの後、黒い球体はだんだん縮まってゆき、最後には包み込んだもの全てと共に消えてしまうはずである。
 しかし、いつまで経っても黒い球体は動こうともしなかった。
 それどころか……

(収縮するどころか……膨張している?)

 そう、黒い球体は少しずつ膨らんでいっていた。
 もうジルヴァルトはこの黒い球体に魔力を注ぎ込むようなことはしていないので考えられる可能性はただ一つ。内側からの圧力だ。

 それに気がついた瞬間、黒い球体に亀裂が走った。
 中から眩い光が漏れて来る。
 次の瞬間、黒い球体は空気を入れ過ぎた風船のごとく、割れ弾けた。

 その中から姿を現わしたのは翼を広げた白い巨大な鳥だった。
 おそらく、その翼を広げることで黒い球体を割ったのだろう。
 手前にはリクが立っていた。
 その鳥は白銀の嘴から長く伸びた尾の先まで見事に白い鳥だった。それは白さを通り越し、ぼんやりと自ら光ってさえいる。
 最後にリクはその白い鳥の名を呼んだ。

「その名は“白鳳”《アトラ》……!」

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